榎本日記

OT3年目がなんやかんや生きていく話

プロフェッショナルって難しい

作業療法士として、というか、対人メインの仕事についている者として患者さんと接するときは明るく・楽しく・元気よくをモットーに頑張っているのだが、疲れていたり、なかなかになかなかなお方とリハビリをする際はついつい虚空を見つめ、スンっとした表情になってしまうときがある。

そんなときふと思い出すのは、YOKOFUCHIGAMIの握手会である。

YOKO FUCHIGAMIとはロバート秋山が架空の人物になりきる「クリエイターズ・ファイルシリーズ」のうちの一人である。バリとパリをいったりきたりし(たまにチリとマリにも行く)「生地が多ければ多いほど、あざとい。」等数々の名言を残すカリスマファッションデザイナーである。

5~6年前のクリスマスシーズン。最寄りのPARCOで開催された彼女の握手会に私は友人と二人で参加してきた。特別に秋山のファンとかそういうわけではなく、単純に近所で有名人に会えるなら行ってみるか~というそんな軽い気持ちで参加したのであった。

会場に着くと長蛇の列。PARCOの吹き抜けの階段にずらーっと上に向かって列を作って行く感じ。授業後に急いで会場に行った我々はかなり上の方の階だったので、下を覗き込んで「すげぇ。。。」と感嘆したもんである。加えて私は有名人の握手会は初参加だったので結構会場に呑まれて圧倒されていた。

下の階がザワザワし始めた。始まったのだ。握手会が。ワーーーーーーとかキャーーーーーーとか黄色い歓声が聞こえる。でもYOKO FUCHIGAMIの声は聞こえない。まだまだ待ちそうだ。私は友人と時折下を覗き込みながら「まだこないねぇ~」「そだねぇ~」と不毛な会話を繰り広げていた。待ち時間の会話なんてこんなもんだ。

黄色い歓声がどんどんどんどん近づいてきた、来た。来たぞ。なんかガタイのいい真っ黒なひとが近づいてきてる。この人が、、、この人がYOKO FUCHIGAMI、、、

ひとつ下の階まで近づいている。うわああ本物。本物。わっわっわっ。

もう、すぐ近くにいる。うわ、この階にきた。もう、もうもう順番がくる。。くる。。

そうしてYOKO FUCHIGAMIは私の目の前に現れた。思ったよりも大きくて、思ったより黒くて、あと記憶が確かであれば服にイルミネーションが絡みついていた。さすがフッションデザイナー。

私は緊張して言葉が出ず、わっわっわっと言いながら彼女に手を差し出した。

YOKO FUCHIGAMIは「今日は来てくれて本当にありがとう」と凛とした声で言い、強い眼差しで私を見つめながら両手でしっかりと手を握ってくれた。

 

こころが震えた。その言葉にしっかりと感情がのっていることは明らかであった。初めて会った私にこんなにもあたたかい感情を向けてくれたことが嬉しくて尊くて、その瞬間から彼女のことが大好きになった。

YOKO FUCHIGAMIは訪れたひと全員に丁寧に握手をし、言葉を交わし、たまに顔を上げて、全体を見上げながら会場全体に向けて「みんな寒い中来てくれて本当にありがとう」「みなさんとてもステキよ!」と声をかけた。

YOKO FUCHIGAMIもとい、ロバート秋山が私にくれたアツくてずっしりとした忘れられない感情。私も人間として、関わっているすべての人に感謝しながら生き続けて生きたい。。。そう思わせてくれるステキな時間であった。

 

社会人になってからこの日のことをよく思いだす。そして思う。

「しかしまあ、ムリなときはムリですな!!」

 

やさしくなりたい~♪やさしくなりたい~♪by斎藤和義